バスの時間がきたので、トラパニに向った。シチリアの道路はよく整備されていて、日本の高速の様な渋滞もなくとても快適だった。何といっても景色が美しい。海、山、オリーブ園…。自然にあふれたシチリアの景観は変化にとみ、ただただ感動、感激した。「北海道と沖縄が一緒にやってきたみたいだな」、そんな印象だった。
初日はトラパニでバスを経由して、シチリア西南の高台の街、エリチェに泊まる予定だった。歴史情緒あふれる小さな街が大好きなので、「中世の趣きが感じられるドラマチックな街」とされるエリチェには必ず訪れてみたいと思っていた。
トラパニについたのは18時だったけれど、早くもエリチェ行きの終バスが行ってしまったらしく、切符売り場のお姉さんに「次の便は明日なので、明日また来て。」と、ぴしゃりと言われる(涙)。地元の人たち確認したらタクシーでもいける距離ということで無事エリチェにはたどりつけたけれど…。さすがイタリア時間だね(笑)、と思った。
その日は霧がたちこめていたので山の下からはエリチェが見えなかったけれど、山道を行くと、急に城壁、そして中世の様な小さくて可愛い街があらわれた。中世の面影があって、何だか郷愁がそそられる町並みだ。パレルモの喧騒とはとても対照的で、シチリアはいろいろな顔を持つのだなと思った。
エリチェには安宿が少なく当日は満室だったので、Elimo Hotelという三ツ星ホテルにとまることにした。シチリアにしてはちょっと高めだったけれど、エリチェの散策には便がよく、何よりもレストランからの景色が絶景だったのでここに泊まってよかったなと思った。エリチェの目玉は古城からの絶景だというけれど初日は霧で日も暮れていたので、散策は明日にし、その日はホテルでゆっくり過ごすことにした。
ガイドブックに情報が無かったので、夕食はそのままElimo Hotelのレストランでとった。ここの魚料理はとても美味しく、再び感動する。日本でもそこそこ美味しいイタリア料理はあるけれど、シチリアの魚料理は日本にはない新鮮さ、そして乾燥した土地だからこそいかされるオリーブオイルとニンニク、ハーブの風味がきいていた。エトナ山の周辺でとれるというワインも荒々しく、本当に美味だった。偶然入ったけれど、Elimo Hotelのレストランには他のホテルの宿泊客もたくさん食べに来ていて、エリチェではとても美味しいと評判なのだという。日帰りでエリチェを訪れる人も是非試すとよいと思った。
一人感動しながらディナーを食べていると、隣席のオランダ人夫婦が話しかけてくれた。夫婦はすでにシチリアを一周したというので、おすすめの街を聞いてみる事にした。ヨーロッパの旅行者はとてもセンスがいいので、とても良い情報を教えてくれる。夫婦の一押しは古代遺跡の街セリヌンテということだった。シチリアでは古代遺跡といえばアグリジェントがメジャーだけれど、最近ではどちらも観光地化されすぎてしまっている。小さくて素朴だけど自然のままの姿が残されたセリヌンテがおすすめだということだった。丁寧に行き方まで教えてくれた上、グラッパまでご馳走になってしまった。一人旅は時にこんな風にほかの旅行者との交流もあって楽しい。シチリアの情報から、オランダや日本のワークスタイルまでいろんな話に花を咲かせた。
シチリア初日は十分すぎるくらい充実した一日だった。明日は晴れてエリチェの絶景が見れますように…、と祈りながら、ぐっすりと眠った。
<エリチェで泊まったホテル>
HOTEL ELIMO